神様のバレー

「神様のバレー」はスポ根というより、頭脳戦がおもしろい漫画です。主人公はバレー実業団のアナリスト「阿月総一」。
※アナリストとは分析家のことで、リーグ内のチーム・選手の動向をチェックして戦略を練る職業で、スポーツアナリストとも呼ばれます。
スポーツアナリストとはどんな仕事か

アナリストは勝つために相手の情報を把握して対策を立てる手腕が要りますが、阿月は子供のころからいかに相手が嫌がることをするかを考える「嫌がらせ」の天才で、その力を遺憾無く発揮する敏腕アナリストです。逆に1チームのアナリスト程度では不満なのか、やる気がないように見える阿月に「万年1回戦負けの中学バレー部を全国優勝させれば、全日本男子の監督のイスを用意する」という提案が降ってきます。提案を飲んで赴任した幸大学園中学校バレー部は気合と根性を頼りに練習してきたチーム。反りが合わないチームを自分の色に染めていき、全国優勝を目指すべく画策を立てます。

試合はコートの外から始まっている、という言葉を実践して勝利を重ねていく手腕は痛快です。思春期で伸び盛りの中学生チームで、勝負を左右する要素は分析できる情報ばかりではなく不確定要素も多いはずなのに、選手一人一人の心の動きなんかも考えて、どんどん勝利を作っていきます。阿月は勝つためのシナリオを考えて、選手の技術面だけでなく感情面にもアプローチする様々な施策を打っていくのですが、予想外の展開も多くてワクワクします。選手は必死で阿月や監督の指導にくらいつきますが、その成長度合いも考慮するという上手度合い。阿月にもそこまでする理由があり(具体的な内容については本編でもぼかされていますが)、本気度合いが伝わってきます。試合のゲーム運びは演出感が強く作者の意図をめちゃくちゃ感じますが、それが説明にもなっているし面白いです。読むのに頭を使わされる漫画です。